(コラム)なぜ地域での脱炭素の取り組みが必要なのか?

うすきエネルギーは「地域の脱炭素化に貢献し、臼杵発!の地域が主役の豊かな地域社会を実現すること」
すなわち、電気を基軸とした新たな事業の創出により、脱炭素化を実現し、地域振興を果たしていくこと というビジョンを掲げています。
では、そもそも、なぜ地域での脱炭素の取り組みが必要なのでしょうか?

1.国・地方自治体の脱炭素の取り組み
政府は、2020年10月、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言しました。
また、2021年4月には、2050年カーボンニュートラルと整合的で野心的な目標として、2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指すことになりました。従来より26%も削減目標を上乗せするもので、これらの達成に向けては、国・自治体・企業が一体となって取り組んでいく必要があります。
加えて、多くの地方自治体も「2050年 二酸化炭素排出実質ゼロ」を目指すことを表明しています。(2022年4月28日 現在、42都道府県、412市、20特別区、187町、35村)

(出所)環境省 地方公共団体における2050年二酸化炭素排出実質ゼロ表明の状況
大分県では、大分県と大分市の2つの自治体がゼロを表明しています。

実質ゼロを表明した自治体は、脱炭素に向けた計画策定を行ったり、再生可能エネルギーの庁舎等への積極的な利用、再生可能エネルギーの導入支援などに取り組んでいます。

2.地域で脱炭素に取り組む意義
地域、特に地方は、少子高齢化や産業の衰退といった課題に直面し、強み・潜在力を生かした自律的・持続的な社会を目指す地方創生の取組が求められています。
その中で、都市部にない「強み」「潜在力」の一つが、再生可能エネルギーを地域で生み出していくというポテンシャルです。例えば、バイオマス資源、太陽光発電が可能な遊休地、水力、地熱、風力といった自然の力を利用したエネルギーを地域主体で生み出せる可能性を秘めています。
しかも、現在の地域で利用しているエネルギーの大半は、輸入されている化石燃料に依存しています。地域の企業、地方自治体が中心となって、地域の雇用や資本を活用しながら、再生可能エネルギーを開発していくことで化石燃料に依存していたエネルギー関連の支出を域内に留めることが出来るようになります。
ロシアのウクライナ侵攻に端を発した、化石燃料の高騰のような外的要因によるエネルギー価格の変動や円安の影響なども地域内でエネルギーを生み出すことで影響を最小限に抑えることが出来ます。
必ずしも、すぐに化石燃料よりも安価にエネルギーが供給できるとは限りませんが、地域発のエネルギーを地域の力を活用して作り出していくことは、長期的にみても必要になってきます。


出所)環境省 地域経済分析ツール(2018年)をもとに、臼杵市分を作成

具体的に、環境省の地域材分析ツールを活用して、臼杵市におけるエネルギー収支を見てみると、74億円の赤字になっています。これは、臼杵市内の域内での総生産額の約6.9%と無視できない大きな額となっています。また、臼杵市の再生可能エネルギーのポテンシャルは、地域で使用しているエネルギーの約2.55倍であり、域内でエネルギーを自立できるポテンシャルは有しています。

このような現状を踏まえて、うすきエネルギーでは、臼杵地域の脱炭素化に貢献すべく、電力事業を中心に様々な新しいチャレンジを行っていきたいと考えています。

3.なぜ世界は脱炭素化に取り組み始めたのか
1.で、国・自治体が脱炭素に向けて取り組みが進んでいるということ、2,で、その脱炭素の取り組みが、地方創生やエネルギー収支を改善するためにも、地域でこそ、求められているということを述べてきました。では、なぜ国が脱炭素化の目標を立てかというと、国際的な脱炭素に向けた合意や取り組みの影響が大きかったといえます。日本が、欧米諸国の脱炭素に取り組みに取り残されないように、脱炭素に関する取り組みを急いだという側面があります。
では、なぜ世界は脱炭素の動きが活発になってきたのだろうか。これについては、「世界はなぜ脱炭素に向けて舵を切ったのか?」(山崎 大, 北 祐樹ほか)を最後にご紹介して、本コラムの終わりにしようと思います。
同論文によると、”企業が組織する経済団体からも反発ではなく脱炭素に協働するという発表が相次いでいる”理由として、”企業に気候リスク情報の開示を求めるTCFD といった新たな気候変動対策ツールの整備”や”民間企業でも気候リスク低減と経済的利益がTCFD等を通して結びつき,「気候変動対策はもはや社会貢献ではなく自己の存続のために必要」という当事者意識のパラダイムシフト”が起こったためと述べています。
TCFDとは、金融安定理事会(FSB)により民間主導の「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD;Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」のことであり、このタスクフォースの提言に基づく「気候変動リスク」に関する情報開示(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標の4項目)を行うことを意識した企業が、気候変動リスクが自社の事業の継続を脅かすリスクになる可能性があることを認識したということがポイントです。気候変動対策に取り組む必要があると多くの欧米の企業が考えたため、政府にも働きかけを行い、積極的な脱炭素の動きが加速したといえるのです。
このような気候変動リスクへの対応は、海外・国内の大企業だけではなく、地域の企業も、今後、直面する可能性がある課題です。特に地域に根差した1次産業、2次産業は直接的な気候変動の影響を受ける可能性もありますし、既に影響のある産業もあるかと思います。そのようなリスクを低減するためにも、地域主体での脱炭素化に取り組んでいく必要があります。

 

参考)臼杵市の地域経済循環分析【2018年版】Ver5.0 の出力データを参考までに、PDFにてこちらに添付します。臼杵市の現状、今後について考える際に役に立つデータが整理されています。

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